『住友銀行秘史』をご存知でしょうか?
発売1週間で10万部が売れ、ベストセラーになりました。
イトマン事件について当時の住友銀行内から観察したノンフィクション。
<内容(amazonより引用)>
戦後最大の不正経理といわれる同事件は、たんに不正をやってバレて首謀者がお縄になった、というような単純なものではない。
イトマン(伊藤萬)、そして同社に多額の融資をしていた住友銀行内の、派閥抗争・人事抗争も含むドロドロしたなかで起きたことだった。
不正を諫めようとする者、それに乗じてひと儲けたくらむ者、人間の欲と感情がもつれ合う。
事件の渦中、著者は内部告発文書を何度も発信し、ときには新聞記者らと手を組みながら、行内の膿を絞り出そうと奮闘した。
本書は著者が手帳に克明に記録していた文章を元に事件を再現するものだ。
ほとんどの人物が実名で登場し、悪態も含めて著者が抱いた感情がストレートに記されている。
ジャーナリストが書いたものにはない迫力を感じる。
バブルを象徴する事件だったのだとあらためて思う。
繊維をメインにしていた老舗商社が総合商社になって、より拡大していこうとしてマネーゲームにはまりこんでいく。
土地を使った錬金術や詐欺同然の美術品取引など、まるで小説のよう。
呆れてしまうのは、住友銀行会長の磯田一郎や住銀役員から伊藤萬社長になった河村良彦らの公私混同ぶりだ。
老いても地位にしがみつき、身内に甘い汁を吸わせようと画策する。
腐った幹部の取り巻きもまた腐っている。
でも、腐っていたのは住銀だけだろうか?
読み物としてとても面白かったです。
まさにリアル半沢直樹の世界が書かれています。
國重氏本人が出版に至った経緯を語っている別の記事を読みました。
「私がイトマン事件当時に見聞きしたこと、みずから体験したことはすべて墓場まで持っていくつもりでした。
私は昨年末に70歳になりました。
あの事件から四半世紀が過ぎたいま、事件の関係者の中にはすでにお亡くなりになった方も少なくないし、住友銀行も三井住友銀行として生まれ変わった。
これを機に、事件を語れる人間の一人として記録を残しておくのも自分に与えられた役割の一つではないかと考えるようになったのです」
大企業であっても、ガバナンスがおかしかくなるとどうなるか。
バブルの教訓も含めて色々と考えさせられる読み物です。

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