過度な節税対策に待った

2019.09.15



9月9日号の全国賃貸住宅新聞や今朝の毎日新聞。

過度な相続税対策が否認された東京地裁判決が載っていました。




国税庁が「ダメ出し」90代資産家の“無理筋節税策”
9/15(日)  毎日新聞より抜粋



90代で亡くなった資産家。

生前、銀行から多額の融資を受けて不動産を購入しており、
その結果、相続税はゼロに――。

国税当局がこれを「過度な節税」とみなしたことをめぐって争われた裁判の判決がありました。



相続税の財産を評価する場合、通常は、
国税庁が定めた「財産評価基本通達」に基づいて評価する。

これは不動産や株式など、
それぞれの財産について細かく価額計算方法を定めたものだ。

だが、国税当局が、この通達に基づく評価では「著しく不適当」と認める特別な事情があるときは、国税庁長官の指示を受けて評価する。

これを定めた基本通達の「6項」は国税当局の「伝家の宝刀」と呼ばれる。


◇亡くなる直前に14億円の不動産投資

最近、国税当局が抜いた「伝家の宝刀」が、相続税の実務家の間で話題になった。

被相続人が相続前に多額の銀行借り入れをして不動産を購入したことを、国税当局が「過度な節税対策」とみなしたことをめぐり争われた裁判で、東京地裁は8月27日、国税庁長官の指示による評価を認め、相続人の主張を棄却したのだ。


この事例をみてみよう。

被相続人Aさんは亡くなる3年前、90歳の時に、賃貸用不動産Xを約8憶3000万円で購入。

さらに翌年に別の賃貸用不動産Yを約5億5000万円で購入した。

この購入資金として、銀行から計約10億円の借り入れをした。


財産評価基本通達による評価では、不動産X、Yの相続税評価額は、
それぞれ約2億円、約1億3000万円で計3億3000万円。

これに対し、購入価額13億8000万円は約4倍。

この倍率は乖離(かいり)率と呼ばれる。


Aさんはこの2件の不動産を購入していなければ、相続財産は6億円を超えていたが、この2件の不動産が加わり、銀行からの借入金を合わせると、負債が相続財産を上回ったため、相続税はゼロになった。


また、2件の不動産のうち、不動産Yは相続開始から9カ月後に約5億1000万円で売却されている。


国税当局は、この申告に待ったをかけた。

6項に基づき、鑑定評価額は不動産Xが約7億5000万円、Yが約5億2000万円による評価が適正とした。


東京地裁はこの国税当局の評価を認めたわけだ。

相続税の実務家の間では「乖離率4倍」が、6項を適用する判断基準となるのかどうか騒がれている。


◇乖離率とは何か

さて、この「乖離率4倍」についてはどうとらえるべきだろうか。

それを考えるために、そもそも通常の不動産取引において乖離率とはどのようなものなのか確認してみよう。


もともと、不動産の時価と相続税評価額との間には、乖離がある。

土地については、公示価格の80%が目安、建物については建築価額のおおむね70%の目安で評価されているからだ。

このため、
相続税の節税対策として不動産取得をすることはよくあることだ。


賃貸用不動産であれば、さらに相続税評価額が下がる。

所有している土地に建てた貸しアパートなどを他に貸し付けた「貸家建付地」では20%前後の評価減、建物は貸家評価で固定資産税評価額の30%評価減となる。

また、事業用小規模宅地については200平方メートルまで50%評価減される特例があり、これが適用されれば、土地・建物合計で相続税評価額は購入価額の50%程度まで圧縮することができる。

この時点で乖離率は約2倍だ。


さらに、不動産が人気エリアや、地価が上昇している地区にあるとなると、さらに時価との乖離は広がる。


一方で、不動産市場は常に変動しているため時価の変動と共に乖離率も変動するし、公示価格の変動と共に路線価も変動する。

つまり、購入時期と相続発生時期などのタイムラグは、相続対策をするにも相当のリスクを負うことになる。



このようにみれば、6項を適用したこの事例のポイントは、乖離率の大きさではなく相続税の節税を目的とした対策そのものに対する戒めと考えたい。

6項による国税庁長官の指示による評価は、その戒めのための手段という位置づけだろう。


この事例では、どういう点が過度な相続対策と判断され、戒めの対象となったのか。

東京地裁の判決から抜き出してみよう。


(1)相続開始直前に、多額の借入金による賃貸不動産投資を行った

(2)銀行の貸出稟議(りんぎ)書によると、相続対策目的であることは明らか

(3)相続開始直後に購入不動産の売却が行われた

(4)本来の相続財産を超える多額の借入金により、相続税額の負担をなくした

(5)被相続人の年齢が高齢であり、短期間に相続対策を行うことには無理があった





不動産賃貸業としての運営実態がほとんどなく、

相続税の節税が主目的であると認定されたことがポイントですね。



税務署のさじ加減で決まってしまう線引きが難しいです。


それ以上に、

世界一高い相続税も見直した方が経済の活性化に繋がると思います。




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posted by ゴン at 17:15 | Comment(4) | 脱サラ大家日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
知恵を絞って「合法的」なスキームを作っても、こうやってどんどん非合法化されてしまうんです!

根本的な解決には移住しかないんですかねえ?
Posted by 真の愛国者ゆりか at 2019年09月15日 18:09
本件、根本的に解釈が半分間違っています。
(1)3年ルールに対する特例が、2018年3月からなのに、1件は、2年半!
(2)事業継続に対する評価減なのに、9ケ月に売った!(趣旨に反する)

ここまでは、全くの問題外!

ま、宝刀を抜いて、戒めがメインですが・・・

ただ、『乖離率』という新しい基準が
これから、論議されると思います。

9月2日に、全力で調査しました。
Posted by アッキー at 2019年09月15日 20:12
真の愛国者ゆりかさん

ルールを作る側は強いですね。

それでも日本は良い国だと思います^^
Posted by ゴン at 2019年09月16日 15:22
アッキーさん

報道ではわからないことありますね!
情報提供ありがとうございます^^

乖離率という概念が出来ると相続対策需要もある都心部相場に少なからず影響を及ぼしそうです。
Posted by ゴン at 2019年09月16日 15:25
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